2018-03-25

『リメンバー・ミー』ピクサーが定義する”死”の形(ややネタバレあり)

RememberMe

泣上戸。
どうも、こんにちは。McFly ( @HI-ENDBLOG ) です。
感動って一体何なんだろうかと考えたりしちゃいます。
子供に絵本読んでて親がその本の良さに感極まって泣いちゃうみたいな事ってあるじゃないですか。
でも子供はポカンとしている。この差ってなんなんだろうかと。
でもその時ポカンとしていた子供もいつかその本で感極まって泣いちゃう時が訪れる。
子供の時には分からなかったその本に隠された「何か」にいつか気付くわけですよね。

最近のピクサー作品も子供はケラケラ笑って観ていると思えば、その横で大人たちは大号泣。
この差って一体何なんでしょうか。
子供の時には見えないけれど、大人になると見えるもの。
逆に子供の時には見えていたのに、大人になると見えなくなるもの。
人生における何らかの大切さに気付かせてくれるピクサーアニメーション。
今回はピクサー最新作「リメンバー・ミー」のお話です。

評価

満足度★10(星10段階評価)
:劇場鑑賞

あっさり感想

・カラフルで賑やかなメキシコらしい死後の世界の表現に心揺さぶられた
・多様な意見や規則があっても家族は決して誰も間違ってないという事を証明する愛の形の表現がとても温かい
・楽曲の良さ

ガッツリ批評

やっぱり泣かされた。

『トイ・ストーリー3』以降、ピクサー作品は”死”というテーマを物の見事にエンタテイメントの世界の中に取り込んだ。(僕調べ)その独特な世界観で描かれる”死”の表現手法は半ばピクサーが産み出した一種の専売特許のようなシナリオ方程式のようにも思える。

ピクサーが描く”死”の何が独特なのか?

例えば、
『トイ・ストーリー3』では、遊ばれることのなくなったオモチャたちの死。
『シュガー・ラッシュ』ではオワコンとなったゲームプログラムの死。
『インサイド・ヘッド』では忘れられ行く思い出達の死。

ピクサーの描く死に共通する要因はその「存在の忘却」により訪れる「死」だ。

その非情な死に対して「もう一度遊んでもらおう」「もう一度思い出してもらおう」と奮闘する彼らの姿には作品としての核たるテーマが確かにあり、忘却の彼方に葬り去られてしまうギリギリの境地からの逆転劇が出力最大のパフォーマンスで描かれ、サンボマスター並みの『愛ってのはなぁっ!』とシャウトせんばかりのエンタテイメントを見出す。

そして何よりもこれら全てのテーマがアニメーションで描く意味があり、アニメーションでしか成せぬ世界観であるという事に非常に意義がある。

その意義とは?

それは
『人生における壮大で意味のあるテーマを親子で一緒に体感する』という意義。
なかなか学校教育や家庭の中で一緒に考える事の出来ないテーマを「アニメーション」という形で共有する事。
日常生活で愛とか正義とか、大切な物事を伝えたり共有したりするためには気恥ずかしいほどの説得力が必要だ。
そんな気恥ずかしさを回避して「大切な事を伝えるために人は物語の力を借りる」のだ。

と、フアン・アントニオ・バヨナ監督作品の映画『怪物はささやく』でモンスターが言ってた。(受け売りかい)

子供心にはちょっぴり難しかったり、ちょっぴり怖かったり、
不思議や疑問がたくさん残るシーンもふんだんに、あくまで清潔感や分かりやすさだけで描かない姿勢。

子供たちが数年後、数十年後にふと思い返した時に「こういう事だったのか」という時を越えて理解する時が必ず訪れる。
そこまでを視野に入れてのピクサーが仕込んだ仕掛け(マジック)のように思える。

映画が公開するというポイントに収まらず、時を経て見出される価値という決して腐る事のない永続的な芸術としてアニメーションを創作する姿勢が、ピクサーブランドを劣化させない1つのポリシーなんだろう。

さて『忘却によって迎える死』を描いてしまった事でピクサー自体も駄作を産めない境地に自らを追いやったようにも思える。
そんな背水の陣でピクサーが仕掛ける最新作『リメンバーミー』はというと、やはり本作でも新たな角度で「忘却による死」が描かれている。

今回はと言うと、

この世の誰もがその存在を忘れ去った時、
死者は死後の世界で再び死ぬ。
死者に訪れる「2度目の死」だ。

つむぎ繋いで今があるという生態系の永続的なテーマをついに、というか早くもピクサーは”死後の死”というあまりにも残酷な設定を採用し、見事にアニメーションで表現してしまった。しかもこれ程までに素晴らしい表現力とシナリオで。

とりわけ設定もユニーク。
音楽が許されない家系に生まれ育ったミゲルは音楽の才能に恵まれてしまった。
才能を封印せざるを得ない家系に生まれるという悲劇としか思えないこの主人公にも関わらず、かすかな奇跡が彼の機運を明るく照らし始める。そう、彼には音楽を心から愛した血が流れていたのだから。(このあたりの設定から先ずジワらせてくる)

しかし、彼の抑えきれないアーティストとしての衝動は、
信じてほしい家族にさえ許してもらえない悔しさから小さな罪を犯してしまう。
その罪が呪いとなり、彼を死後の世界と結びつけてしまうトリガーになるわけだが…

果たして少年ミゲルは死者の呪いを解く事が出来るのか。
彼の信じる音楽の力は何を救う事が出来るのか。
その呪いを解く鍵は死後の世界に生きる彼の「音楽を許さない」ご先祖様たちが握る。

カラフルで鮮やかに故人の魂を弔う「死者の日」真っ盛りのメキシコの夜を舞台に、
情熱的に描かれる物語は幾多もの奇跡を生み出し、感動のフィナーレを迎える…事は出来るのだろうか?

この物語は単純に先祖を敬おうという堅苦しい説法ではなく、手が取り合える範囲で愛を育むことが永代未来への育みに繋がるんだよといういずれ過去になる現代に大きな力が秘められている事を教えてくれる。

冒険を終えたのび太君が急にパパとママを大切に思って抱きつき、ママが急にどうしたのと困惑する映画版ドラえもんによくあるシーンが思い浮かぶ。この映画はまさにあの瞬間の のび太君の気持ちを疑似体験させてくれるような力がある。

最期の1カットまで感動させてくれた。
思わず涙が溢れた観客も多かっただろう。
その流れた涙。
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ。と、サンボマスターが言ってた。

こんな人にオススメ

・どうしてお父さん、お母さんは分かってくれないのという幼少期体験をしたいつか子供だった大人たち
・まだまだ世界中が不思議に溢れている子供たち
・宗教風習が肌に合わないけれど自己流の宗教を心に宿してオリジナル供養されているような方々

作品詳細

映画「リメンバー・ミー」公式サイト
Filmarks映画「リメンバー・ミー」リンク
2018年3月16日上映(2017年製作) / 製作国:アメリカ / 上映時間:105分 / ジャンル:アニメ

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です