2018-07-12

『勝手にふるえてろ』和製アメリを彷彿とさせる平成最後の快作(ネタバレなし)

未だにあまちゃんロス継続中。
どうも、こんにちは。McFly ( @HI-ENDBLOG ) です。
朝ドラ「あまちゃん」と言えば看板女優となったのん(能年玲奈)さんが思い浮かびますが、彼女がドラマの中で所属することになったアイドルグループ「GMT」のリーダー役を務めた松岡茉優の存在感に当時虜になっておりました。

あれから早くも5年。
そんな彼女が初主演を務めた綿矢りさ原作×大九明子監督作品、映画『勝手にふるえてろ』がDVDレンタルスタートしていたので鑑賞報告を始めまーす!

評価

満足度★8(星10段階評価)

あっさり感想

・「オタク性」を遺憾なく発揮しつつ「大衆性」を損なわない松岡茉優の”使い分け演技力”が馴染めない世代の心を鷲掴む。
・「DISH//」「黒猫チェルシー」らミュージシャン俳優の若手新鋭が邦画界に風穴を開ける会心の一撃作品。
・震えて死ぬなら見てから死ね!平成最後の妄想脱却傑作選。

ガッツリ感想

和製アメリ。
この一言に尽きなくもない”妄想”と”現実”の狭間で揺れる女の恋心珍道中といったコミカルムービーでありながら、オフィスレディを切り口に時代を今をトレースする巧妙な設定に思わず「自分の物語」と錯誤してしまう。この辺りはさすがは原作者である綿矢りさの絶妙技といったところ。これに松岡茉優の表現力が加わり、鬼に金棒と化した平成最後の邦画名作の1つといった印象。

一見、何の変哲もなく従順に社会に馴染みながら日常生活を送っている”どこにもいるような女の子”主人公ヨシカ。
この作品では”どこにでもいる女の子”が決して”社会的普通”に収まっているわけじゃないんだという静かなる主張が伺える。
「オタク性」を遺憾なく発揮しつつ「大衆性」を損なわない松岡茉優の”使い分け演技力”がまさに、馴染めていそうで馴染めない世代の心を鷲掴む。

「なんだか社会に馴染みきれない」という実際にはそれとなく馴染みつつ生活を営んでいるんだけど、
自分の中に存在するインナーな一面を世間に向けてアウトプット出来ずに「どうせ誰も本当の自分を理解出来ないんだ」と”さらけ出す事”を諦めて悶々と日々を送る人間は男女世代を問わずに多くいるだろう。
そんな人間にとっては思わず『この映画は自分の映画なんじゃないか』と錯覚してしまうほどに上手く今の時代を表現出来ているように思う。

あまりにも理路整然と構築された社会システムに平然と馴染みながら日々を過ごす大衆に紛れ、
孤独感から殻に閉じこもり妄想の世界へと身を投じる自身の姿を”絶滅危惧種”に例え、実生活では”絶滅種”の朽ち果てた美しさを愛でるヨシカの姿に狂おしいほど哀愁を抱いてしまうのかもしれない。

ヨシカには更にもう一つ、恋愛経験が無く自身が処女であるという羞恥心と不安が付加されている。

未経験であるという彼女自身の(勝手な)劣等感や保守性がこの物語の要である”妄想恋愛”と”現実恋愛”との狭間での押し迫る選択や言動に大きく影響を及ぼしている。
「失敗できない」という圧力と「未経験は恥である」という彼女自身の心に宿るマイノリティを淘汰する価値観が”焦り”となって行動に現れる姿は正にオタク特有の言動で思わず笑ってしまう。

この作品で要となるキャラクターが彼女の10年以上の妄想恋愛の片思い役「イチ」の存在と
ミステリアスな彼女に想いを寄せ猛烈アタックを仕掛ける「ニ」の存在。
永遠比較対象として天秤の上に乗り続けなければならないこの2人。
妄想相手が現実的であってはならないし、現実恋愛が理想的であってはならないという要のバランスを見事にこなしているのが、ダンスロックバンドDISH//のボーカル北村匠海とロックバンド黒猫チェルシーのボーカル渡辺大知のミュージシャン俳優。
最近ブレイク中の銀杏BOYZ峯田和伸をはじめ、ドラマ映画界のキャスティングのトレンドになりつつあるミュージシャン俳優のキャスティングも、福山雅治時代には無かった”癖のあるキャラクター”にミュージシャンをキャスティングするという傾向が邦画界やドラマ界に新しい風を吹き込んでいるように思える。

ともかく10年片思いのヨシカが初めて男性から告白されるという起点から動き出すこの幸運にも「選ぶ側」に立ててしまった妄想ガールの”理想””と”現実”の狭間で展開される恋愛活劇にDokiDokiが止まらない。
1歩間違えれば絶滅確定になり得ないデッドラインの窮地で「理想郷」へと駆け出したヨシカに下した神の最後の審判とは。

「寂しい寂しい」と勝手に震える自分を見捨ててどうせ死ぬなら後悔せずに死んでみろと言い放つ新たな自分に出会える強烈ボディーブロー。平成が終わる前にノーガードで一度味わってみてはいかがでしょうか。

こんな人にオススメ

・妄想恋愛に「逃げ込んでいる」事に気づいている人
・街中の変てこな人に自分と似たものを刹那的に感じてしまう多感な人
・考えが女子的な頭女の子おじさん

作品詳細

映画「勝手にふるえてろ」公式サイト
Filmarks「勝手にふるえてろ」リンク
2017年12月35日上映(2017年製作)/日本/上映時間;117分/ジャンル:ドラマ・コメディ・恋愛

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