2018-04-09

『クソ野郎と美しき世界』新しい地図が示す妥協なき指針

kusoyarouクソ野郎。
どうも、こんにちは。McFly ( @HI-ENDBLOG ) です。
何だか悔しくてどうしようも形容しがたい時、思わず汚い言葉って口から出ちゃう時ってありませんか。
僕はあります。でもそれって決してネガティブな思考なんかじゃなくて、逆に自分をポジティブに変換するための言葉の装置なんだなって気付かされた映画がありました。
映画ってふと自分の状況に立ち戻った時に色んな事にじゅんわり気付かせてくれますよね。
今日は話題の映画『クソ野郎と美しき世界』を見てきたお話です。

評価

満足度★6(星10段階評価)
:劇場鑑賞

あっさり感想

・3人の背景を含める条件付きで何重もの意味が発生する化学反応オムニバス映画。
・宣言書であり、挑戦状そして宣戦布告。攻めるアイドルが眩しすぎる。
・誰もが経験する「失う」事をテーマに、希望を見出すヒントを教えてくれる。

ガッツリ批評

稲垣吾郎・香取慎吾・草彅剛の3主演による4つのオムニバスフィルムが1つの作品となった短期間限定上映作品。

言うまでもなく元SMAPである彼らがジャニーズを引退し、作品を通じて彼らが「提示」する新たな表現の舞台として堂々と華々しく話題性たっぷりに2018年4月6日より「2週間限定全国公開」として封切りされた。

さぁどんなものだろうと1800円を支払いスクリーンの前にドスンと構えた。

上映直後に映し出されたのは「あの日」日本中が目撃したこの映像だ。


思考はタイムスリップする。

7月に世間を騒がせたSMAP解散&稲垣・香取・草彅らのジャニーズ事務所退社報道から2ヶ月後、9月22日にジャニーズとは異なる事務所での新たな再出発を早々に宣言。
新たなファンサイトを「新しい地図」と称して、改めて真っさらな地図を皆で一緒に描いて行こうと力強いメッセージと共に堂々たる門出を彼らが切ったあの日、引退後からそれまでの心配の声を丸ごと払拭し、その想いを方位磁石がキュキュっと正しい方角に指針を示すがごとく、180度真逆のベクトルである「期待感」へと一気に転換してしまった彼らの持つ『アイドル性』に改めて心を鷲掴みにされてしまった人は本当に多くいたに違いない。

「只事ではない何かが始まる」

この後展開される怒涛のメディア戦略は裏切りの連続だ。良い意味で。
タレントとしての活躍はもちろん、これまでタブーとされてきたSNSへの進出に始まり、芸術の世界への進出。どれも期待通りで期待以上。

意外性とサプライズに満ちた「彼ららしい」活動の数々に心機一転から1年も経たないまま再び彼らは日本中の話題を圧巻してゆく存在となる。

さて、ファンサイト『新しい地図』にて映画製作の情報が解禁されたタイミングが昨年10月16日。
この時点で公開まで約半年(もない)。
全国規模の映画製作には充分とは言えないこの僅かな期間。
再出発を機にこれまでタブーとされてきた幾多もの分野で次々と派手に暴れまわる彼らの活躍を見ていると、タイトなスケジュールのリスクを犯してでも
・映画という媒体を使い(自由度の高い表現媒体で)
・短期間で (熱の冷めやらぬうちに)
・多くの人に(全国規模で)
伝えるべき想いを込めた作品を提示しようとしているのではないだろうかと深読みをしてしまわなくもない。

声を大にして言えない「何か」を声高らかに叫んでやると言う決意表明。
それを表現するキーワードが『クソ野郎』であって、そんな経緯と反逆を持って『美しき世界』に宣戦布告してゆく彼らもまた自身を『クソ野郎』と称し、スクリーンに新しい地図を投影してゆく。
(ええ、ええ、あくまで個人の見解ですとも)

上映時間、105分。

なるほど。

短期間で製作したとは到底思えぬ作り込み。
ありとあらゆるジャンルをミックスし全体を通して極上のエンタテイメント。
以前どこかのインタビュー記事で、音楽プロデューサーの中田ヤスタカ氏が「東京発がジャンルとなるサウンド」を目指すと答えていた記事があったが、それを引用すれば「東京Film」とでも確立出来そうなほどに洗礼された「都会的な芸術」に満たされているような「掴みきれない奇妙さ」に持ち溢れていた。

『ピアニストを撃つな!』 監督・脚本:園子温
『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』監督・脚本:山内ケンジ
『光へ、航る』      監督・脚本:太田光 
『新しい詩』       監督・脚本:児玉裕一

精鋭のクリエイターらが描くそれぞれの物語の中で稲垣・香取・草彅らが演じる主人公たちは各々に「失う」事に真っ向から対峙する。

自ら掴み損ねた事。
気付けば奪われた事。
役割を繋ぐために与えた事。

失い方は様々ながらも今の3人が演じる事で深い意味が生じるテーマだ。
これらの短編を茶目っ気たっぷりに収束させる役割を果たす4つ目のストーリーは彼らがそれぞれの物語の中で失ったものをただ単純に「取り戻す」事に収束しない。
新たな形で「再生させる」という価値観をもって語られる物語。
語り方は彼らが最も輝きを放つ”音楽”を主軸とする”ミュージカル”が選定されている。

「歌って踊る彼らが見たい」という多くのファンの期待に呼応するように、煌びやかでエンタテイメントに満ちた舞台が3人を結びつけ、物語は幕引きを迎える。

以前のようにヒットソングを引っさげ、全国のホールを駆け巡るツアーが出来るのはまだまだ先になるかもしれない。ただ日本中のファンと心を結ぶ日本一のアイドルとして、何としてでも伝えたい思いが込められた宣言書であり、挑戦状であり、宣戦布告だ。

「ピアノを弾けないピアニストに勝ったって何も面白くねぇだろ」 – マッドドッグ –

トップランカーが厳しい条件を乗り越えてでも短期間で何としても作り上げなきゃいけない作品があった。それが誰のためなのか。何のためなのか。犠牲を払ってでも伝えるべき事に全力を尽くした彼らの結晶がこの「クソ野郎と美しき世界」に込められた想いなのでは無いだろうか。

映画を通じてそれぞれの心に灯される思いはあるだろう。
僕にはスクリーンを通してクソ野郎の声が聞こえた気がする。

「俺たちはここにいる」

今後も3人の活躍には目が離せない。

こんな人にオススメ

・少なくとも3人が好きという思いがある方
・自称クソ野郎
・ハッピーエンドを求める方

作品詳細

映画「クソ野郎と美しき世界」公式サイト
Filmarks「クソ野郎と美しき世界」リンク
2018年4月6日上映(2018年製作) / 製作国:日本 / 上映時間:105分 / ジャンル:オムニバス

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