2018-09-07

『SUNNY-強い気持ち・強い愛-』が色々強すぎて全く共感出来ない(ネタバレあり)

一生友達。どうも、こんにちは。McFly ( @HI-ENDBLOG ) です。
今回は強者揃いの夏映画の最終参入「SUNNY 強い気持ち・強い愛」の感想です。
原作の韓国版との比較は一切無し!要点だけ教えろって方は面倒な【コラム】は飛ばして読んでくださいね。
※下記、【ガッツリ感想】には映画本編の「ネタバレ」が含まれます。ご注意ください。 

【コラム】学校は創造と破壊が連続し合う小宇宙だ

学生時代の過ごし方は大きく2パターンに分けられる。
とにかくグループで時間を共に過ごす事に重きを置いて学生生活を送るタイプ。
群れず(群れられず)完全孤立状態で休憩時間も定位置にて完全なるルーティンをもって日々を過ごすタイプ。

この両者が決して交わることは無いのか?と問われるとそうでは無い。
前者には派手な者しかいないのか?と問われればこちらもそうでは無い。
ただ後者には日々をクールに過ごしつつ、前者のグループの中にも上手く溶け込むといった特殊能力を持つ者もいたりする。
学校社会はまるで小宇宙の様にしっかりと自らの立ち位置を他者に示した上で、互いにその領域を侵す事なく存在する事で均衡を保っている。今も昔もそう変わりはないだろう。

小さな校舎の中で多様な価値観が共存しなければいけない「学校」という特別な社会の中で、日々交錯する「個のエネルギー」は、もはや「教育」という名の下では縛り付けることの出来ない独自の倫理や道徳の創造と破壊の連続だ。
とてつもない速度で衝突を繰り返しては、日々時代の文化をも吸収し進化を遂げてゆく。
刹那その衝突の連続は時に「新たな文化」として広大な宇宙に1つの惑星を産みだすかの如く、強い光を持って輝き始めその頭角を露わにする。

奇跡的に個の力を持って輝きだす者もいれば、集団性を持つ事で光り始める流星群も存在する。
90年代、彼女らは突如姿を表した。
世間はその生命体を「ギャル」と呼んだ。

評価

満足度★3(星10段階評価)
:劇場鑑賞

あっさり感想

・「ギャル」=「懐かしい」に導く文化創造人の演出の巧妙さに観覧者のアイデンティティが上書きされがち。
・チームSUNNYの豊満さに感じる「強すぎる程に強い気持ち」に戦々恐々。
・踊らにゃ損損!エンディングに感じるカンフーヨガ的投げやり感。

ガッツリ感想

■ターゲットをギャルに絞る強み

映画「SUNNY 強い気持ち・強い愛」は平穏な日常に突如、学校という小宇宙が社会に産みだした平成の大怪獣「コギャル」が謳歌していた「ギャルブーム」真っ只中の90年代を1つの背景に“懐かしさのテーマパーク”でもご覧あれと言った具合に、当時の女子高生たちが思わず「懐かしい」と声に出し涙ぐんでしまいそうになってしまうような要素を詰め集め、当時コギャルだった女性たちに向けてエネルギーを込めて送り届ける青春ムービーだ。

主演に篠原涼子や広瀬すずを迎え、その他のキャスティングにも余念がない。
ここ数年ヒット作を産みに産み出している時代の文化創造人:川村元気が企画。
監督には「モテキ!」のブレイク以降、失敗知らずの名監督:大根仁がメガホンを取り、脚本も手がけた。

ブレイク必須の座組みの体勢で挑んだ本作、夏のツワモノにその勢いを阻まれ初週7位からのスタートと期待を裏切る結果となっている。「大ヒットスタート」とは言いづらい初週成績の背景には昨今のキャスティング頼りな一面とギャルブームをまるで全国的なムーブメントの様に扱ってしまった代償の様にも感じる。

本作で描かれる主人公たちの過去パートである90年代の舞台となる高校は女子高でありながら「ギャル率100%」という強気な漫画設定。
ミスチルも歌った秩序なき90年代、女子高生の間で流行したルーズソックスにニットカーディガン、安室奈美恵にTRF、ポケベル、ガラケー、援交にテレクラetc… スクリーンには数々の「あの頃のアイテム」が溢れ出す。

初期のプリクラや、写ルンです風のインスタントカメラで撮影しているシーンなどでは周囲のいつかの女子高生たちのため息も思わず漏れていた。ギャルブームを牽引した数々のキーワードやアイテムを詰め込みこの映画を”懐かしさのテーマパーク”にするにはこの手法はうまく機能しているように見える。

ただ、そこまでこの映画で描かれる「あの頃ギャルだった自分」に心を投影できる女性観覧者は一体どれほどいるのだろうか?
この映画の中のギャルたちが心底懐かしいと言えるほど自分たちを「ギャル」と認識していた女性たちは。
映画そのものの作りが非常に上手いだけに勘違いしてしまいがちだがここで、『ギャルってそんなにいたか?問題』にぶち当たる。

「ギャル要素」に酔狂して鑑賞後に「懐かしい」と声を上げてしまうのは本物のギャルかもしくは援交で痛い目にあっていたおじさんだけなんじゃないかと疑ってしまう。

少なくとのギャルブーム真っ只中に当時和歌山の片田舎の中学校に通いモーニング娘。のMステ出演に心踊らせていた僕の学校では「ギャル風」の連中が4人ほどいたように思う。
約320名の学年に4人の割合の生存率。
1.25パーセントだ。
記憶の範囲を町内・県内に広めて考えてもギャルと言えるギャルを目撃した記憶はない。

MIZE
イヤイヤ、和歌山って。まず比較する地域が間違ってる。笑

「懐かしさ」のターゲットを「ギャル」に絞ったという強みは感じるものの、絵に描いたようなギャルたちが「一斉を風靡していた時代」という現象は都心の幻想だったのではないだろうか。

MIZE
和歌山以外にはいたんだよ。このクソ田舎野郎が。

仮にいたとして、気に入らない者をリンチし、パンツを脱がせてサラリーマンに売りつけるなんていう時代を一体どれほどの人が体験し、どれほどの女性たちが共感するのだろうか。

MIZE
お前はパンツごとドブ川に捨ててやりてぇわ!許さんぜよ!
McFly
さっきから言い過ぎだろ!しかもそれもっと前のスケバンだからな。

映画の中で大人になった彼女たちが現代の女子高生たちを眺めながら「今の子は」と勝手に悲観するシーンがあるが、当時のギャルたちも完全に「今の子は」の対象だったはずで、社会の目に敵対する意思がしっかりと根ざしていたはずだ。
そんな彼女たちが成長し、現代の若者を「今の子は」と揶揄するシーンには
『コイツら自分たちが一番嫌ってた大人にしっかりなってるじゃねーかと』と耳を疑ってしまった。

というわけで地方ほど響かないなぜかギャル要素に固執した捻れ青春映画「SUNNY-強い気持ち・強い愛-」のレビュー始めます。

MIZE
えっ!?始まってなかったの!?怖っ。

■強い気持ちの部分が本当に強すぎる

とにかく客観性に乏しい物語が横行する。
何もかもを美しく輝く事に重きを置いて演出しようとするような美化の美学。
ティザーから泥水すするような主人公ではない事は想像できたが、あまりにも過去や現在を強気に美化していく姿勢には狂気を感じた。

広瀬すずパートである90’sJK奈美が三浦春馬演じる大学生DJに恋心を奪われるエピソードには正直映画としてグッとくる名シーンだ。
大根監督の真骨頂である邦楽と物語を自然に映画の中で絡めながらロマンティックの爆発を演出するシーンには映画や音楽の楽しさが詰まりに詰まっていて胸のうちからグワッとこみ上げる想いに囚われる。
視線が交差したと同時にCharaの「やさしい気持ち」が流れだす演出には「これ!これ!これ!」と叫びたくなる想いを押し込めた。

そんな甘い想いを告げられなかった奈美の恋心を失恋まで描きながら、
20年後大人奈美はなんと探偵の力を使って初恋相手の居所を突き止める
既に高校生の息子を養い、カフェを営んでいた彼いつかの彼も同じように歳を重ねたがその魅力は健在だ。
奈美は過去の思いを清算すべく、勇気を振り絞って20年間大切に保管していた彼との思い出の品を引き渡し、自分の名を告げぬままに一方的に別れを告げてその場を去るのである。

この映画一番の感動のシーン、、、な訳ある?

いやもうそんな女いたら本当にしばらく怖い。
片思いを20年越しに直接清算しに来る女。
あまりにも奈美の狂気な恋愛体質に「これは実際の夫婦生活に満足していない大人奈美の焦燥感を意味しているのか?」と無駄な深読みを要求されてしまう。夫の出張中に家庭を顧みず、人生2度目のセルフ失恋の末に海辺で流した奈美の涙には一体どんな理由があるのか。そして何を期待していたのか。

また仲間意識の強さのあまり、チームSUNNY再集結後、不倫の証拠を特定した裕子の旦那を共に集団暴力で制裁するエピソードも、安易で絵的な面白要素に固執してしまったなというイメージで、これもまた彼女たちに共感できない要因に拍車をかけてくる。

わざわざ学生服に身を包む意味もわからぬままに、殴る蹴るの大暴行。最終的には金属パイプで顔面をフルスイングで血しぶきまみれ。昨今コンプライアンスが叫ばれるこのご時世に余命1ヶ月の設定をここまで能天気に描く作品も珍しい。僕は一体何を見せられているのだろうかと呆気にとられてしまう。

女性が新たな輝かしい人生の一歩を改めて歩みだすにはストーカー行為も傷害も厭わない!
こんなエピソードの連続に徐々に確実に僕の心はチームSUNNYから解離していくのであった。

■勘違いされたままの成長

とにかく「私たちルール」で物事を解決してゆくSUNNYの面々だが、個々に抱えるトラブルにはかなり無関心。
問題提起はあるものの、円満とは言えない家庭環境を奈美自身が改善しようという気も無さそうだし、働かない旦那に頭を抱えながら家族を支えなければならない梅も売れない不動産を売る気もなさげ。
そもそも仲間探しも成功報酬1人10万円という高額な依頼料にも顧みず探偵頼りだし、借金沼に陥った心の目の前で問題をお金で解決してしまう奈美の行動は生活環境の違いを見せつけるあまりにも残酷な行為な様に感じた。
貧乏でルーズソックスを買って貰えなくて自分で引き伸ばした靴下を履いていた奈美はどこに行ってしまったのか。

唯一自分たちの力で解決した裕子の浮気問題には慰謝料とフェラーリを頂戴する事でカタをつけ、自分たちの暴力沙汰はなかったことに。
最終的には余命を全うしたリーダー芹香の築いた財産が遺言により分配され、梅の営業成績を援助したり、心の人生大逆転の夢の美容室開業やアル中治療への資金援助として分配されたりと、彼女たちの抱える問題を死をもって一瞬にして解決してゆく。

果たして好意として分配された芹香の財産を正面から受け入れる事が、今後の彼女たち個々の成長に繋がるのだろうか。

最終的に阿波踊りとして考えなければならない作品

多くの疑問符を残しながの幕引きでは、大人SUNNYと子供SUNNYが肩を並べて小沢健二の曲で踊り狂う。
これには名作「カンフー・ヨガ」のエンディングに匹敵する衝撃を受けた。
そんな深い事は考えず、求めず、頭の中空っぽにして笑って踊って人生楽しもうよ!といった阿波踊り的メッセージがあのエンディングに込められていたのだとしても、人は時代の流れに応じて成長する必要性があるよなという事を余命を全うした芹香から学ばされた。

「忘れたあの頃を取り戻す」といえば、今月公開になるクマのプーさん実写版「プーと大人になった僕」も楽しみだな。

というわけで強い気持ちと強い愛で周りの事なんか気にする事も無く強く生きる女性たちの物語「SUNNY-強い気持ち・強い愛-」
池田エライザがど偉い可愛いので超オススメです

MIZE
池田エライザで100点なるのかよ!

こんな人にオススメ

・ギャル街道走らせてもらってた方
・亭主ブン殴りたい欲をスッキリさせたい方
・テレクラにハマっていたあの頃を思い出したい方もどうぞ

作品詳細

映画「SUNNY 強い気持ち・強い愛」公式ホームページ
Filmarks「SUNNY 強い気持ち・強い愛」リンク
2018年08月31日上映(2018年製作)/日本/上映時間;118分/ジャンル:ドラマ

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