2019-02-08

『七つの会議』鑑賞レビュー (ネタバレあり)

「食べ放題」って凄く無理して食べちゃう。
どうも、こんにちは。McFly ( @HI-ENDBLOG ) です。
いや、元々ね食い意地というか元取りたい根性というかね、心が卑しいのかもしれないですけど「食べなきゃ損」みたいに思っちゃうんですよ。
で、結局店を出るとお腹がパンパンに張っちゃって大変なことになっちゃう。
やっぱりね食べ放題といえども食べる量もバランスも大事なんですよね。
そんな豪華ラインナップの胃もたれするような映画を本日はご紹介です。

あらすじ

都内にある中堅メーカー・東京建電。
営業一課の万年係長・八角民夫(野村萬斎)はどこの会社にもいる、所謂“ぐうたら社員”。
トップセールスマンである課長の坂戸(片岡愛之助)からはその怠惰ぶりを叱責されるが、ノルマも最低限しか果さず、定例の営業会議では傍観しているのみ。
絶対的な存在の営業部長・北川誠(香川照之)が進める結果主義の方針の元で部員が寝る間を惜しんで働く中、一人飄々と日々を送っていた。
ある日突然、社内で起こった坂戸のパワハラ騒動。 そして、下された異動処分。訴えた当事者は年上の部下、八角だった。 
北川の信頼も厚いエース・坂戸に対するパワハラ委員会の不可解な裁定に揺れる社員たち。 
そんな中、万年二番手に甘んじてきた原島(及川光博)が新課長として着任する。 会社の“顔”である一課で、成績を上げられずに場違いすら感じる原島。 
誰しもが経験するサラリーマンとしての戦いと葛藤。 だが、そこには想像を絶する秘密と闇が隠されていた……。

映画「七つの会議」

評価

★6(星10段階評価)
:劇場鑑賞

あっさり感想

・濃厚コッテリ役者界の戦国武将バトル
・池井戸劇団によるマンネリ演出のどこに新鮮味を感じればいいのか
・闇の露呈がまさかのリアルタイムニュースとリンク

ガッチリ批評

『売って、売って、売って、、、売り倒せぇーっ!!』

池井戸潤原作による劇場版最新作がいよいよ公開された。ドラマ「下町ロケット」を2018年12月に終え、正月特別ドラマを経て、2月の頭公開というマーケティングとしては完璧過ぎる組み立て。

まさに冒頭の香川照之演じる「鬼」こと東京健電・営業部長「北川誠」の台詞はこの映画の配給宣伝チームにかかっていたのでは無いだろうかというほどに、配給営業ニ課の涙の努力が伺えた。

※以下、本編のネタバレを一部含みますのでご注意を

池井戸潤といえばやはりテーマは「企業が隠したる悪態の露呈」。今回もやはりこの部分に物語を落とし込んでいくんだけど、やっぱり事の話の運びが非常に上手い。上手いと言うのは設定に無理がなく、相関図に社会性があり、進展に裏付けがあるという意味で、シナリオの説得力の脂が非常に乗っている。

大企業のグループ構造におけるピラミッド関係や、社内カースト、部署間の抗争、出世争いと地方異動という名の社内裁判。

さらには弱者たる下請け業者の体質や、下町工場の苦悩、働くヒト本来の心の拠り所である家族や家庭にと、マクロにもミクロにもストーリー毎にフォーカスを絞りつつ、多勢のキャラクターの相関図やマウント順位を次々に入れ替え差し替え展開していく。

これに今回日本のゴジラこと野村萬斎演じるぐうたら社員「居眠り八角」に関わる社員が全て謎の降格・左遷の嵐を喰らう社内政治に疑問を感じた営業二課課長 「原島」を演じる及川光博が企業の闇に深く関わって(巻き込まれて)いく事になる。

追えば地獄、追わぬも地獄。
企業の闇はどこで産まれるのか。
犠牲者は一体誰なのか。
正しさとは何なのか。
原島主演の世にも奇妙な物語が展開されていく。

ドラマ「半沢直樹」以来この池井戸潤ワールドに没頭したファンも多いと思うが、大企業の体質に対する嘘か誠か半ば都市伝説的な闇に焦点を当ててファンタジーにしてしまう思い切りがしっかりと2019年にはエンタメとして成立したと感じる。

この功績は原作者である池井戸潤とその多くを実写化に結びつけた福澤監督の涙ぐましい努力の結果であることは間違いないだろう。

ただその反面でマンネリ感も否めなく、今回に限っては

McFly
まぁーーたネジか!!!

と心の中で声をあげた観客も多かったのではないだろうか。

McFly
信長の野望かよ

と思わずツッコんでしまうような「役者の演技合戦」という1つの魅力にスポットを当てて楽しむには非常にそれ1つで満足に足りるほどに濃厚で価値の高い日本代表戦が鑑賞出来るものの、映画にはやはり1800円なりの相対的価値観を求めてしまう。

ドラマ版に似た展開、似た心情、左遷で制裁、似た構図と似たアングル、似たオチに似た涙。

McFly
見たことあるなぁーーー。。。

が永遠と展開される。

気付けば最後の『御前会議』を迎えてしまい、「あれ?七つも会議あったかな?」という特に意識の必要もない所に気が逸れてしまっていた。

高速な流行り廃りの時代の流れで早くも芽生え始めた「飽き」の感覚。面白いんだけど今ひとつ満足感が無い。

既にパターンを体験してしまっているために最後の大オチに御前様が隠蔽側に回る事に新鮮味が感じられなかった。

例えば「三谷幸喜作品」は『三谷幸喜が監督だから観に行こう』というマインドを持って劇場に行くが故に作品にたとえ「見たことある感じ」でもそれは「三谷幸喜作品」としての楽しみがある。これは配給側もそこに1つのセールスポイントがあるので、「三谷幸喜作品ですよー!」という告知をバンバンと打つ。これは客側にしかけるマインド戦略としては正しいし需要と供給が成り立っているし鑑賞後の満足感もしっかりとある。

「三谷幸喜おもしれぇなぁー!」になる。

一方で「福澤監督による池井戸作品」は邦画特有の監督名を露出しない形式の宣伝方法を選んでいるために、観覧者側に「福澤監督演出」のマインドが働いていない。結果として”下町ロケットのチームが”の告知が拡大し、『池井戸潤原作のまた下町ロケットに似たような映画か』のマインドが働いてしまう。

「うん、下町ロケットだったね!」で劇場を去る。

見た事のある展開や演出に1800円払わされるこの感覚たるや。

結局企業もののラスボスは「上層部による隠蔽」でしかないので隠蔽以上の罪深い破壊力をエンタメとして創り上げることができるかどうかが今後のこの手の作品の課題だろう。

何の因果かこのタイミングで賃貸アパート大手の「レオパレス21」が自社が手がける物件のうち1300棟を超える物件で施工不良が見つかった報道が流れている。直ちに転居が必要とされる顧客は少なくとも1万名を超えるらしい。

例えば火事が起きた際に火の勢いを留める事ができない構造の物件にも顧客を住まわせてしまっていると言う危険性を孕んでいる。このブログを書いている正に今にも火事が起きるかも知れない。この辺り、この作品を見た方にはゾッとする内容のではないだろうか。

そう言う意味ではやはりこの作品には穏やかではないメッセージが込められている。エンドロールで投げかけられる問いにアナタならどう答えるだろうか?

おちおち穏やかに居眠りも出来やしない。

こんな人にオススメ

・企業内で圧倒的イニシアチブを取りたい社員
・企業体質を仮想体験してみたい就活生
・営業部に恨みを持っている経理部

作品詳細

映画「七つの会議」公式サイト
映画「七つの会議」Filmarksリンク
上映日:2019年02月01日 / 製作国:日本 / 上映時間:119分
ジャンル:ドラマ

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