『翔んで埼玉』鑑賞レビュー(ネタバレなし)
人生初のコース料理は8歳の時。
どうも、こんにちは。McFly ( @HI-ENDBLOG ) です。
子供の頃、両親が晩ご飯前に大ゲンカになった事がありまして、母親が家を飛び出るのに「ついて来い!」と言うので、ついて行ったんですね。
そしたら「この怒りは食欲で満たす」と言う事で連れて行かれた先が高級レストラン。フォークやナイフが皿の左右に整列されているきちんとしたタイプのレストランで、前菜からメイン、デザートまでフルコースの贅沢三昧。
ちゃっかり親父のカードで決済した母親はお腹を満たして怒りを鎮めて家に帰ったんですが、子供ながらに気を遣ったのなんのと言いながら、あの時初めて食べた生ハムメロンの味が今でも忘れられない。
(ちなみに親父は腹が減ったと言い出せずその日のご飯は我慢したそうな)
こんな感じでまとめてます➡️
あらすじ
埼玉県の農道を、1台のワンボックスカーがある家族を乗せて、東京に向かって走っている。カーラジオからはDJが語る埼玉にまつわる都市伝説が流れ始める――。
その昔、埼玉県民は東京都民からそれはそれはひどい迫害を受けていた。
通行手形がないと東京に出入りすらできず、手形を持っていない者は見つかると強制送還されるため、埼玉県民は自分たちを解放してくれる救世主の出現を切に願っていた。東京にある、超名門校・白鵬堂学院では、都知事の息子の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)が、埼玉県人を底辺とするヒエラルキーの頂点に、生徒会長として君臨していた。しかし、アメリカ帰りの転校生・麻実麗(GACKT)の出現により、百美の運命は大きく狂い始める。
麗は実は隠れ埼玉県人で、手形制度撤廃を目指して活動する埼玉解放戦線の主要メンバーだったのだ。その正体がばれて追われる身となった麗に、百美は地位も未来も投げ捨ててついていく。
評価
★8(星10段階評価)
:劇場鑑賞
あっさり感想
・平成邦画コメディのマスターピース!
・眠れる地元ソウルが熱くなる俺の田舎自慢で盛り上がる
・入れ子構造に見る邦画コメディの期待感
ガッツリ批評
コース料理のようなエンタテインメント
彩られたテーブルの上にウェイターが料理皿を運ぶように上品でナチュラルに前菜からメインディッシュそして食後のデザートまで物語をきちりと構築しながら皿の上や周囲の空間演出までも楽しませてくれる。コース料理を嗜むような「コメディドラマ」として非常に価値の高い作品だった。
メイン食材は言うまでもなく『埼玉』。
「主役になれない食材」が見事に主題としてストレートに時に斬新に料理され尽くされている。
副菜となる千葉や神奈川に至っても素材の価値を徹底して高めた上でその地域性の旨味を抽出している。群馬に関しては観葉植物的な扱いにも関わらずその魅力を欠く事なく非常に重要な役割を示すキーワードにもなっている。
終演後、思わず『シェフを呼んでくれ』とGACKT声で言いたくなる出来栄えだった。
ここ最近こてこての中華料理のような油っこいコメディ演出が福田雄一監督作品を筆頭に、「全コメディタレント佐藤二朗化計画」でも進められてるんじゃないかと疑うくらいに皆が皆佐藤二朗のように演じることに疲れが出ていたので、そういう意味では非常にホッとさせてくれる作品だった。
食後に口元をとんとんとナプキンで拭いながら「美味しゅうございました」と【和歌山県民風情】が楽しませて頂きました!!
ええ、ええ、和歌山県民風情がね。
観客の地元愛が呼応する
予告編でもオープンになっている埼玉県人と千葉県人の河川を挟んだ戦線にて、両者の出身タレントの旗を掲揚し相手を威嚇し合うシーンでは千葉県人が世界的ロックバンドを代表するYOSHIKIの旗を掲げ埼玉県人を威圧していたが、和歌山県人の私は心の中で和歌山市観光大使であられるHYDE様の旗を高らかに掲げましたよ。
つ、強い。。。
桂枝曾丸じゃあ、、、よ、、弱い。弱すぎる。
あのシーンは観客席でも皆各々に地元排出有名人の旗を掲げたと思いますよ。
映画史に残る素晴らしいシーンです。
そういう意味でもこの映画は観終えた後の会話が見えやすい。「映画」が持つのコミニュケーション機能に非常に特化している。
「僕の地元はさ…」
「私の地域じゃさ…」
劇場を後にする観客たちの中で地元ネタ、地域比較ネタが飛び交う。見終えた後にまた一盛り上がり出来る映画は本当に素晴らしい。
そしてなぜか観た後にGACKT風の口調になってしまう主演GACKTの影響力はなんなのだろうか。
GACKTはGACKTを演じ続けてきた説
過去主演作『MOON CHILD』や『BUNRAK』、大河ドラマ『上杉謙信』、舞台『義経秘伝』においても役者としての存在感を示すロック界の隠れた鬼才ではあるが、GACKTに関してはメディアに露出しているキャラクター以外にも彼のライブでしか見せないエンターテイメントが存在する。
ソロデビュー後から2016年に至るまで開催された「VISUALIVE(ヴィジュアライブ)」と名打たれた彼のコンセプトツアーでは自身のライブや舞台、映画、小説など様々なコンテンツを「MOON SAGA PROJECT」として一つのテーマに括る世界観で多種な物語を複雑にリンクさせその物語の中の主人公たちを演じ、歌い表現する事でGACKTならではの世界観を演出し続けてきた。
過去のリリース作の中にもこの「MOON SAGA PROJECT」にテーマが置かれた作品も多く、登場する主人公たちは時代や世界が異なるものの、いずれも1つの運命に導かれるかの如く悲痛な愛と確かな絆の元それぞれの天命を全うしている。
前述した映画『MOON CHILD』や舞台『義経秘伝』はその『MOON SAGA PROJECT』のテーマが投影された作品群の1つであり、これら全てを主演はもちろん総合演出やプロデュースまで手がけている。
歌う事の表現に収まらない多くの分野でクリエイティブであり続ける彼にとって、アーティストGACKTを構築する作業は1つ「GACKTを作り上げる作業」つまりは「演技」に通ずる過程であったのではないだろうか。
ここまで軽く掘り下げただけでも彼自身が本来表現したいと求めているエンターテイメントの核の表面に触れたレベルに過ぎないだろう。
明らかにGACKTはGACKT自身を演じ続けている。表現することに確たるテーマを置いている彼の発する不思議な魅力の理由の1つには、明確なコンセプトの元に形成されたGACKT像を、彼自身が追求する事で生まれる賜物なのだ。
そう、考えると日々ストイック過ぎるトレーニングに励む理由も理解出来る。メディアというフィルターを介してのみでは図れない本質的な人間性をベールに包む事もまたGACKTの持つ魅力の1つに繋がっている。
本質的な部分をベールに包むという意味では今回彼が演じた「隠れ埼玉県人」である事を隠し「エリート東京都民」として白鵬堂学院に転入してきた「麻美 麗」はその容姿もさることながら彼にとってハマり役としか言いようがない。キャスティングチームの大勝利だ。
入れ子構造でボケとツッコミを役割分担
キャラクターの魅力もさる事ながら、全体の構成も非常に上手い。
【都市伝説世界】と【現実世界】を過去未来での同軸時系列に置きつつ、現実世界においてラジオDJ(これも埼玉を代表するFMステーションNack5と洒落が効いている)をストーリーテラーとして都市伝説世界の歴史を語らせる。
ツッコミなしのボケ倒しのそれを常識とする世界観をもつ都市伝説世界に対し、現実世界を入れ子構造として観客と同じ目線でツッコミを入れるという映画オリジナルの演出がコメディ映画の中で非常に機能している。
こちらのツッコミ欲が元気玉のエネルギーのように蓄積されて「もう無理!」と丁度心地よいタイミングでツッコミ型現実世界の入れ子構造が働く。
そんなこんなで「翔んで埼玉」
GACKTの喘ぎ声を聞くだけでも1800円の価値がありました。
フルコース大変美味しゅうございました。
ご馳走様でした。
こんな人にオススメ
・東京都民以外の下々の民
・地元愛に溢れる人
・4月から晴れて上京される方々
作品詳細
映画「翔んで埼玉」公式サイト
映画「七つの会議」Filmarksリンク
上映日:2019年02月22日 / 製作国:日本 / 上映時間:106分
ジャンル:コメディ
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